ライブやイベントで、会場全体に音を届ける役割を担うスピーカー。良いイベントを行うためには欠かせない、非常に重要な音響機材です。
演者、話し手がいくら素晴らしいパフォーマンスをしても、聴き手に音が届かないのでは意味がなくなってしまいます。会場全体に音が届くよう、会場の広さに合わせた適切なスピーカーを選ぶことが重要です。
本記事では、PAで使用するスピーカーの選び方を初心者向けに解説します。
PAで使用するスピーカーの選び方
昨今では音楽ライブだけではなく、会社や学校など、さまざまなシーンでスピーカーが使用されています。スピーカーの役割も多様化しており、いろいろな機能が搭載された製品が販売されています。
本章では、スピーカーを選ぶ際に理解しておきたい仕組みや機能について解説します。
パッシブ・スピーカーとパワード・スピーカー
PAで使用するスピーカーは、下表の2種類に分かれます。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| パッシブ・スピーカー | 電気信号を空気の振動に変換する役割に特化したスピーカー。電源不要だが、別途パワー・アンプが必要。 |
| パワード・スピーカー （アクティブ・スピーカー） | 電気信号を増幅させるパワー・アンプを搭載したスピーカー。電源が必要。 |
スピーカーは、マイクやミキサーから送られる電気信号を空気振動に変換し、音を出す機材です。電気信号をそのまま変換すると十分な音量を得られないため、パワー・アンプと呼ばれる機器で電気信号を増幅してから空気振動に変換します。
パワー・アンプを内蔵したスピーカーをパワード・スピーカーと呼びます。逆に、電気信号を空気振動に変換する、スピーカー本来の機能に特化したものをパッシブ・スピーカーと呼びます。
パッシブ・スピーカーは、パワー・アンプを自由に組み合わせできるため、システムを拡張しやすいというメリットがあります。一方、パワード・スピーカーと比べると、機器や配線の数が多くなり、設置スペースの確保や配線の整理がやや煩雑になります。
一方、パワー・アンプが内蔵されたパワード・スピーカーは、システム拡張の自由度はパッシブ・スピーカーに劣りますが、マイクやミキサーを直接接続することができるので、システム構成や配線をシンプルにすることができます。
多様なイベントに合わせて、毎回異なるPAシステムを組みたい場合は、パワー・アンプを自由に組み合わせできるパッシブ・スピーカーを選択したほうがよいでしょう。
逆に、システムの拡張を行う予定がなければ、マイクやミキサーを直接接続できるパワード・スピーカーが便利です。トークイベントなど、簡単な催しであれば、BGMを鳴らすスマートフォン、マイク、パワード・スピーカーだけで対応できることも多いです。
なお、最近はミキサー、パワー・アンプ、スピーカーを一体化したポータブルPAシステムも人気があります。
ポータブルPAシステムは、必要機材が一体化しており、接続が簡単で取り扱いやすくなっています。機能も初心者向けにわかりやすく整理されている製品が多く、音響機器を初めて使用する方にもおすすめです。
入力端子
スピーカーの入力端子は、パッシブ・スピーカーとパワード・スピーカーで異なります。
パッシブ・スピーカーは、「スピコン」というコネクターを用いて接続するのが一般的です。
スピコンは、主にパッシブ・スピーカーとパワー・アンプの接続に使用されます。扱える電力が大きく、コネクターにロック機構が付いているため、ケーブルが抜ける心配がありません。
パワード・スピーカーでは、XLRコネクターや標準フォーン・コネクターが入力端子に採用されます。
昨今では、1つの端子でXLRコネクターと標準フォーン・コネクターの両方に対応できる「コンボジャック」を採用した製品も増えています。
そのほかパワード・スピーカーでは、スマートフォンやオーディオプレイヤーを接続できる「ステレオ・ミニ・コネクター」を搭載している製品もあります。
パワード・スピーカーは、マイクなどの外部機器を直接つないで使用できることが強みです。自身が使用したい外部機器に対応した入力端子が備わっているか、事前にチェックするようにしましょう。
Bluetooth
パワード・スピーカーの中には、Bluetoothに対応した製品もあります。Bluetoothに対応していると、スマートフォンなどをワイヤレスで接続し、BGMを流すことができます。
例えば、コワーキングスペースやカフェなどでスピーカーを使用する場合、通常営業時はBluetoothで接続したスマートフォンからBGMを流し、イベント開催時はミキサーとスピーカーを接続して、複数本のマイクを同時に使用するといった使い分けができます。
音響調整機能
パワード・スピーカーの中には、音響調整機能を有した製品があります。例えば、HK AUDIOのSONARシリーズでは、専用アプリを介して手元の端末で音量バランスを調整し、エフェクトをかけることができます。
ミキサーを別途用意せずとも本格的なPAが可能となるため、非常に便利な機能です。
対応する設置方法
PAで使用するスピーカーは、現場の環境によって、最適な設置方法が変わります。例えば、ステージモニターとして使用する場合は、演者の足元に置くため、客席の邪魔にならないように高さを抑える必要があり、向きも演者に向けて斜めにしなければなりません。
【ステージモニター】演者が自身の演奏を確認するために、ステージ上に設置するスピーカーのこと
そのため、ステージモニターとして使用する場合は、横向きに設置できるスピーカーを選択しましょう。
PA用のスピーカーは縦向きと横向き設置の両方に対応した製品もあるため、イベントによって用途を変えたい場合は、両対応のスピーカーを選択すると良いでしょう。
スピーカーを天井から吊り下げたい場合は、吊り下げ用の金具を設置できるスピーカーが望ましいです。
スピーカーに取り付け金具などを設置できる部分を「サスペンション・ポイント」と呼びますが、金具を設置して固定したい場合は、事前にサスペンション・ポイントの位置や仕様を確認しましょう。
用途に合わせたスピーカーの選び方
スピーカーを使用する場合は、用途や環境に合った製品を選ぶ必要があります。その際に確認するべき項目は2点です。
- スピーカーの大きさ
- 出力できる音圧
本章では、HK AUDIO SONARシリーズの3つのモデルを例に、仕様を見比べながら説明します。
スピーカーの大きさ
まずは、スピーカー・ユニットの大きさを見比べてみましょう。スピーカー・ユニットは、1つのボディ（エンクロージャー）の中に、高域再生用のスピーカー・ユニット（HF：High Frequency）と中低域再生用のスピーカー・ユニット（LF：Low Frequency）が入った、「2Wayフルレンジ・スピーカー」と呼ばれる製品が主流です。
【補足】LFは中低域を担当するため、Low-/midと記載されていることもある
SONARシリーズ 3モデルのスピーカー・ユニットの大きさと、ドライバー構成は下表のとおりです。
| 型番 | HF | Low-/mid スピーカー |
|---|---|---|
| SONAR 110 Xi | 1インチ 1インチ ボイスコイル | 10インチ 2インチ ボイスコイル |
| SONAR 112 Xi | 1インチ 1.35インチ ボイスコイル | 12インチ 2.5インチ ボイスコイル |
| SONAR 115 Xi | 1インチ 1.35インチ ボイスコイル | 15インチ 2.5インチ ボイスコイル |
高域は、そこまで大きなユニットを使わなくても十分な音量を鳴らすことができるため、HFのサイズは大きくは変わりません。
一方、カバー範囲が広いスピーカーほどLFのユニットが大きい、あるいは複数のユニットが搭載されるようになります。スピーカーを選ぶ際には、LFを基準に見るようにしましょう。
スピーカーの大きさを検討する際は、使用する用途から考えることも重要です。例えば、スピーチであれば低音域はあまり必要ありませんが、音楽ライブであれば低音域はとても重要です。
音楽ライブで使用する場合は、LFの大きさや数が十分かを確認しましょう。
なお、低域の量感を豊かにしたい場合は、メインスピーカーと別に、サブウーファーを足すのも有効です。
サブウーファー用のスピーカーは、大型の低域スピーカーを内蔵するなど、クリアで迫力のある低域を出力します。
出力できる音圧レベル
そのスピーカーが、どのくらいの音量（音圧レベル）を再生できるかを表した数値が「最大音圧レベル」です。単位は、音圧の大きさを示すdBで表記されています。
（参考）SONARシリーズ 3モデルの最大音圧レベル
| 型番 | 最大音圧レベル |
|---|---|
| SONAR 110 Xi | 123 dB ハーフスペース（ピーク@ 10 % THD） 126 dB ハーフスペース（計算値） |
| SONAR 112 Xi | 125 dB ハーフスペース（ピーク@ 10 % THD） 128 dB ハーフスペース（計算値） |
| SONAR 115 Xi | 130 dB ハーフスペース（ピーク@ 10 % THD） 133 dB ハーフスペース（計算値） |
人間がギリギリ聴き取れる音量を0dBとしたとき、60dBは一般的な会話、120dBは飛行機のジェット・エンジンの騒音程度と言われています。
届けたい音が騒音にかき消されないよう、人の出入りや環境音などをあらかじめ想定し、騒音よりも大きい音圧レベルで出力できるスピーカーを選択しましょう。一般的にアナウンス放送では6dB以上、BGMを流す場合は3dB以上、騒音量よりも大きくすると良いと言われています。
例えば、レストランやオフィスの平均的な騒音量は60dB程度と言われています。その環境であれば、アナウンス放送は66dB以上、BGMは63dB以上の音圧レベルで流すことが望ましいです。
加えて、距離による音圧の減衰量も意識する必要があります。音は距離が遠くなるほどに小さくなります。これは、音の発信源から離れるほどに、音圧が減衰するためです。
例えば、スピーカーからの距離が1mでは100dBの音圧を得られたとしても、2m離れると約6dB、4m離れると12dB、10m離れると20dBも音圧が減衰します。
【補足】上記の計算は、反射音を無視した場合の距離と音圧の減衰量です。
会場の騒音量に加えて、スピーカーから客席最後部までの距離を考慮して、必要となる音圧レベルを推測しましょう。
おすすめのパワード・スピーカー
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| 周波数レンジ | 45Hz～20kHz |
| ドライバー構成 | HF: 1インチ LF: 10インチ |
| パワー・アンプ | 300W(最大)、クラスD |
| 入力端子 | XLR×1 標準フォーンジャック(3P)×1 |
| 出力端子 | XLR×1、バランス |
| 寸法（W×H×D） | 252×299×483mm |
| 質量 | 8.1kg |
ライブイベントや音楽再生イベントに最適なパワード・スピーカー BEHRINGER B110D EUROLIVE。リーズナブルながら、最大300Wまで出力可能なパワー・アンプを内蔵したスピーカーです。
スピーカー内部には、パワフルな10インチウーファーと音抜けの良い1インチダイアフラムを搭載。超軽量でコンパクトなボディですが、迫力のある音圧を実現しています。
本体に2バンドEQを搭載しており、スピーカーだけで音を調整することができます。
HK AUDIO SONAR 110 Xi
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| 周波数レンジ | ±3 dB： 64 Hz – 18 kHz -10 dB： 59 Hz – 20 kHz |
| ドライバー構成 | HF: 1″, 1″ ボイスコイル Low-/mid スピーカー： 1x 10″, 2″ ボイスコイル |
| パワー・アンプ | 800W（ピーク) |
| 最大音圧レベル | （ピーク@ 10 % THD）： 123 dB ハーフスペース （計算値）： 126 dB ハーフスペース |
| 入力端子 | XLR コンボジャック×2 3.5 mm ステレオジャック×1 |
| 出力端子 | XLR×1、バランス |
| 寸法（W×H×D） | 310 x 535 x 300 mm |
| 質量 | 11.5kg |
PAスピーカー専門ブランド HK AUDIOのパワード・スピーカー SONAR 110 Xi。優れた音質に加え、Bluetooth対応や専用アプリによるリモート操作にも対応した、高機能スピーカーです。
HK AUDIO は、革新的なギターアンプを数多く生み出している「Hughes & Kettner（ヒュース＆ケトナー）」で培った経験や技術が生かされており、非常に優れた音質を実現しています。
加えて、Bluetoothでスマートフォンなどのデバイスに保存されている音楽をワイヤレスで再生できる上に、無料の専用アプリを介して、ほぼすべての機能をワイヤレスで操作できます。
店舗、企業、学校、イベントなど、PA を必要とするあらゆるシーンで活躍するパワード・スピーカーです。
おすすめのパッシブ・スピーカー
BEHRINGER PK110
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パッシブ・PAスピーカー
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| 周波数レンジ | ±3 dB :87 Hz ~35 kHz -10 dB :20 Hz~20 kHz |
| ドライバー構成 | HF: 1インチ LF: 10インチ |
| 許容入力 | 480W(ピーク時) |
| コネクター | スピコンタイプ |
| 寸法（W×H×D） | 491 x 315 x 261 mm |
| 質量 | 約7.2kg |
許容入力480Wのパッシブ2Way PAスピーカーシステム BEHRINGER PK110。小型ながらも迫力のある音圧を出力できるスピーカーです。
ドライバーには、深い低音を提供する10インチのロングエクスカーションドライバーと、優れた高音域を提供する最先端の1インチコンプレッションドライバーを採用。
持ち運びしやすいエルゴノミカルな形のハンドルを備え、安価ながらも使い勝手の良い製品です。
HK AUDIO PREMIUM PR:O 10 X
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| 周波数レンジ | ±3 dB： 95Hz ～ 19kHz -10 dB： 80Hz ～ 19kHz |
| ドライバー構成 | HF: 1インチ Low-/mid スピーカー： 10インチ x 1 |
| パワー・アンプ | 許容入力（RMS）：300W 許容入力（PGM）：600W 許容入力（PEAK)： 1200W |
| 許容入力 | （ピーク@ 10 % THD）： 126 dB ハーフスペース |
| コネクター | スピコン NL4 x 2 |
| 寸法（W×H×D） | 320 x 485 x 300 mm |
| 質量 | 12.5kg |
熟練した職人による技術力と、メーカー本社による行き届いた製造管理により、優れた品質と高い信頼性を実現したHK AUDIO PREMIUM PR:O 10 X。本シリーズの製品は、すべてドイツ本国のHK AUDIO本社工場にて製造されています。
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